取引先が破綻した場合

このページでは、取引先が破綻した場合の対処法について解説しております。 「債権回収を行なう際に知っておくべきことって・・・」
「債権を持っているのに取引先が倒産してしまった・・・」

 会社を経営していると、必ずといっていいほど、取引先倒産の憂き目に遭うこととなります。このような場合、倒産した会社に債権者が押し寄せることになります、実際には事業所が閉鎖されるなどしていて、優先的な回収はほとんど期待できません。

 ですから、取引先が破綻してしまった場合の債権回収は非常に困難となります。特に、不動産担保を有していない企業にとっては、その後の破産手続等において配当金を受領できるのみで、債権のうちの大半は回収不能として諦めるしかないというケースが多く見受けられます。しかしながら、「諦めるのは早い」と思えるケースも多くありますので、是非一度弁護士に相談してみて下さい。下記では、取引先が破綻した場合の4つの回収方法をご紹介いたします。

(1)相殺により、回収する

 相殺とは「当事者間で対立する債権を相互に保有し合っているような場合、当事者間の債権、債務を対等額で消滅させる」という制度のことです。相手に対して債権をもっていれば、相殺を用いることで、取引先が破産しても債権回収を図ることが可能になります。両者を相殺させることで相殺の範囲で実質的に債権を回収したことになります。

 しかし、こちらの権利を行使したくても、相殺の意思表示を行なう場合に、誰に対して、どのように行使すべきか、というのが大変分かりづらいことと思います。そのような場合には弁護士を利用して、破産手続等の法的整理手続に応じて意思表示の相手方を選択し、内容証明郵便を利用する等を選択することで、より確実な方法で、相殺の意思表示を行使することが可能となります。

 相殺権行使の具体的方法等については、文書の記載内容や行使時期等の問題もありますので、弁護士による法律相談を受けてみることをお勧めいたします。

(2)担保権を実行する

 債権者の担保権は別除権と呼ばれ、別除権は破産手続によらずに行使することができます。なので、破産手続開始決定があっても、債権者の担保権は制限されることなく行使することができるのが原則です。したがって、これらの担保権を有する債権者は、破産開始決定後も、担保権を実行して債権の回収を図ることができます。

 所有権留保で商品を取引先に売買し、取引先が倒産してしまった場合には、売買契約を解除し、取引先の了解をとった上で商品を引き上げることができます。

 しかし、こちらは取引先の了解をとらないと、窃盗罪などに問われるおそれがあるため、書面での了解をとる必要があります。この了解を相手から得るためには、代表者か取引先の弁護士からとることをお勧めします。

 その理由としては、「取引先がその商品を既に第三者に転売している場合、その第三者が商品の所有権を即時取得していることが考えられること」、及び、「取引先との売買契約の中で第三者に転売されたときは所有権留保が解除される」と定められている場合があることから、所有権留保の方法によることは難しくなってしまうからです。

 抵当権を有する場合は、裁判所に対し、競売の申立てを行うことになります。申立を行なう際に必要な書類は、抵当権の設定登記に関する登記簿謄本です。他にも抵当権の存在を証明する確定判決でもよいですが、大抵は登記簿謄本で申立てを行っていきます。また、申立を行う裁判所は、対象不動産の所在地を管轄する地方裁判所です。

(3)債権譲渡

 債権譲渡とは、債務者の有している債権を、債務の弁済として受け取る方法をいいます(債権の売買ないし代物弁済となります。)。
 債権は自由に誰に対しても譲渡できますので、債務者は債権者に対して、債権譲渡をすることができます。

 どのような取引先においても、それまで何らかの事業を行ってきた以上、第三者に対して金銭債権を持っていることは十分に考えられます。その場合には、取引先からその債権の譲渡を受け、貴社が譲り受けた債権を第三者に対して行使することにより、債権の回収を図ることができます。

 債権譲渡を受ける場合には、A社から債権の譲渡を受けたうえ、A社からその取引先C社に確定日付付きの債権譲渡の通知書を出してもらう必要があります。内容証明ならば確定日付がありますので、内容証明を用いて、取引先に譲渡の通知をさせましょう。

(4)自社製品・他社製品を回収する

 自社製品を回収する方法については、上の所有権留保の実行方法で記載させていただきました通りです。
 売買契約の解除を行い、所有権に基づいて回収をすることになりますが、取引先の承諾が必要となります。

 また、他社の製品を取引先から譲り受けることにより、代物弁済として債権の回収を図ることができます。もっとも、この方法を採る場合には、もともと第三者の財産だったものであるため、「自社の製品を回収する」場合よりも、さらに取引先の同意書を取っておく必要が高くなります。同意書がない場合だと、窃盗罪に問われる恐れがありますので注意が必要になります。さらに言えば、この場合は取引先も容易に同意書を交付してくれない可能性があります。そこで、取引先に対し、「弁済するまでこの製品は預かっておく」と申し向け、預かり証を取引先に交付する、という手段もないわけではありません。ただ、一つ間違えば大変危険な方法となってしまいますので、実行する場合は弁護士に相談下さい。